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| 渓と渓魚に魅せられた渓流師たちの釣り語りや山語り。 渓流師の炉辺語りを大胆にも紹介していこうという企画。 この企画を記念しまして、第1話はスペシャルゲストの游魚人さんからの炉辺語りを紹介します。 |
| 第1話 フクロウ事件の顛末 游魚人 |
| ウチのHPにも遊びに来て URL- |
| 今季2回目の渓流釣りは、3月27日(金)吉野川をねらう。この時期にテンカラでアマゴが釣れるか、否かを検証したいからだ。神姫会の春の例会で、相棒は達磨大師こと田中佳憲君だけ。 JR姫路駅前に7時集合。達磨車が待機、久々の再会を喜びあう。今は晴れているが、天気予報では昼から崩れると言う。いつまで持つか、雨が降らないうちに釣らねば…。今日は我らテンカラ師、是が非でもテンカラでアマゴの顔を見ようと張り切っている。幸い今日は比較的暖かい。道行く桜並木の桜も心なしか、芽が膨らんでいよいよ春近し。 姫路から吉野川へ行くには、幾通りもルートが考えられるが、彼に一任する。姫路の北西方向を目指し、新宮町〜三日月町〜南光町を経て佐用町へ抜けるルートを取った。こんな山中だと言うのに結構、車の往来は意外に多いのだ。道中、可哀想にタヌキが轢かれ、3頭が死んでいた。タヌキの生息が多い事実を物語っている。 物の本によれば、タヌキはパニックになると動かずにじっとする。即ち俗に言う「タヌキ寝入り」の習性がある。夜行性のタヌキが道路を横切ろうとした際、車のライトに当てられ、びっくりして気が動転してパニックに陥りじっとして轢かれるのだろうと、達磨さんと話し合った。これがネコならきっと左右に動き助かる可能性も高いのになあ…。 そんなことを話していたさなか、栗栖川を越えた相坂峠付近でまたもや動物の屍骸が我らの眼前に横たわっていた。? と通り過ぎたが、どうも獣ではなく、鳥、それも大型の鳥のように思えた。 「今の鳥と違うか」 「そやねん、ぼくも気になっていたんや。タヌキとは違いまっせ」 「戻って確かめよう」 見ると、トビに似ている。鉤型の鋭い爪、それに嘴。大きさはトビより少し小さくカラスぐらいか。しかしトビと決定的に違ったのは顔だ。ちょうど人間のような感じで目が位置している。鳥の中で人間のような顔をしているのはフクロウしかないとの結論を得た。フクロウはワシタカ類と同様、小鳥の他、野ネズミなどの小型獣をエサとする猛禽類である。したがって食物連鎖の上位に位置する鳥なので、絶対数が少ない。その存在は物語や絵本などで広く古今東西の子供にも知られている鳥だが、実際に目にしたり、手にとって触れる機会など殆どない珍しい鳥だ。実際ぼくもこの歳(52歳)になるまでフクロウに遭遇したのは、動物園で見たのを除き今日が初めてだ。無論達磨大師とて同じだ。 何故このフクロウが車に轢かれたのか、道中推理した。以下は達磨刑事と游探偵の推理物語を関西風のコミカルタッチで表現しよう。 達磨刑事「これは、獲物を追っていたフクロウが、獲物に気を取られるあまり車に気づくのが遅く、鉢合わせしたんでっせ。きっとそうや」という。 游探偵「いや、それは違うな。用心深いフクロウが車に気づくのが遅うて当たったという線は考えにくいで。それよりこない考えたらどうや。開発で樹木が切り倒され、フクロウにとって住みにくい世の中になり、縄張りも以前のように十分な広さを確保できひんようになったんやなあ。」 「それがこれとどう結びつくんでっか。」 「まあ、話は最後まで聞くもんや、達磨刑事。数少ない獲物を求めてフクロウが飛んでいた時、たまたま複数のフクロウが同じ獲物を見つけたんやなあ。」 「それで…どうなりまんねん、游探偵。」 「後から来た一羽のフクロウが目ざとくその獲物を捕獲するのに成功したんや。ところがそのフクロウより前から狙っていた他のフクロウたちは目の前で獲物を掻っ攫われておもろないわなあ。そやから、そのフクロウを他のフクロウたちが寄ってたかっていじめ殺した。即ち袋叩きにした訳や。」 「そんなあほな。」 件のフクロウを回収して、帰りに解体し羽をもらうことにした。勿論その羽を使って毛鉤を巻くためである。日本全国に何人、何百人のテンカラ師がいるのか定かではないが、フクロウ毛鉤を持っているのはそうはザラにいないだろう。そんなことを達磨さんと車中話し合った。 「柔らかい羽やし、イケまっせ、これは。」 「そやなあ、帰ってフクロウ毛鉤を巻く楽しみができたなあ。ただ、モノがモノだけにこの毛鉤は昼間は釣れんで。夜しか釣れんのと違うかなあ。」 といつまでも下らん軽口をたたきながら、気がつくと国道373号線沿いの道の駅「あわくランド」北の釣場に辿り着いていた。 9時過ぎである。とりあえず2時間ほど釣る。前回は坊主を食らっているだけに今日はなんとしてもアマゴの顔を見たい。水温が低いせいか、アマゴはまだ瀬には出ていないようだ。トロ場から瀬に出る比較的水深のあるポイントをねらう。二、三度アマゴらしい魚信が出たが掛け損ねた。 しかし、ついにアマゴを掛けた。錆もないきれいなアマゴだ。20a弱、まずまずだ。一匹釣れたのでほっとする。その後も、二、三度出たがやはり鉤掛かりしないまま時間がきたので集合場所に集結する。 いつもは竿を出さない達磨さんが今日は意欲的だ。達磨さんに釣果を聞く。 「どうやった。」 「小さいのばかり5つ掛けましたで」 「立派、立派。こっちは一匹や」 あわくランドで食事を済ませ、食後にワンラウンドして帰ろうと言うことになった。 昼からは場所を換えて、吉野川の支流、後山(ウシロヤマ)川に転進することにした。この川は名前の通り、後山(1344)に源を発し、コブシの花で有名だ。東粟倉村役場の庁舎を過ぎた辺りから川相がよくなってきた。いかにも(アマゴが)出そうな気配である。駐車スペースのあるところを探す。そこで1時間ほど釣った。達磨大師が成魚放流と思しき良型アマゴを1匹掛けたが、ぼくはここではムツばかり。 この日の釣果は達磨大師6匹、ぼくが1匹で、水をあけられた。常日頃、グー(0)、チョキ(2)、パー(5)の釣果という彼が今日は6匹なので出来過ぎか。彼はまたの名を陸奥守という。即ちムツの守。亡くなられた彼のテンカラ師匠、故神村氏がテンカラを練習するには、初めからアマゴを相手にするよりスパーリングパートナーとしてカワムツを掛ける練習をせよとアドバイスしたとの由。今日はまだシーズン初めなのでカワムツポイントでやったから釣れんたんですわ、と謙遜するところが奥ゆかしい。 余談だが故神村氏について心温まる話があるので是非紹介したい。直接釣りとは関係ないが、達磨大師及び彼を取り巻く人々を知るよすがともなるのでしばしお付き合いを乞う。氏は7〜8年前、千代川支流来見野川の諸鹿渓谷でへずりした際、テンカラ竿を落とし、川に流失してしまった。数年後、彼は亡くなり、竿は所在不明のままだった。 ところが世の中、捨てたものではない。奇特な御仁がおられるのだ。ある日、達磨大師が何気なくインターネットの千代川、テンカラという具合に的を絞って検索しているうちに何と兵庫県小野市在住の前田さんという方が拾った竿を紹介しており、心当たりの人は連絡下さいとあった。一目見て、達磨は思わずあっと叫んだ。これぞ捜し求めていた亡き師匠のテンカラ竿に間違い無いではないか.何たる奇縁か。 それから連絡をとり、ご丁寧にも宅配便でお送りいただき、その竿を師匠の御内儀にお渡ししたところ、形見と想って差し上げたいとのこと。彼は既に生前師匠から竿をいただいていたので、同行の弟弟子にあげたと言う。件の拾い主はテンカラ竿を持っておらず、シーズンになったら購入するとのこと。これを伝え聞いた達磨大師の総本山、京都北山テンカラ会の冨士さんが「私のをもろうておくれやす」と言って、結局、拾い主に冨士名人のテンカラ竿が渡されたとのこと。世知辛い世の中に近年まれに見るええ話を聞かせてもらった。まるで現代版「井戸の茶碗」(古典落語)です。さしずめ達磨さんは正直な屑屋、前田さんは長屋の浪人武士、冨士さんが細川の殿様かな。 やはり、人間正直がええです。「情は人のためならず」巡り巡ってやがては自分に返ってくるものなのですね。 ところで件のフクロウは帰路、東屋のある公園で解体後、丁重に弔ってやりました。あのままだとスルメ状態になり、単なるゴミとして扱われるに違いありません。我ら酔狂なテンカラ師によって世にも稀なフクロウ毛鉤として第二の人生ならぬ鳥生を有意義に過ごすことになったのです。かのフクロウ君もきっと草葉の陰で喜んでいることでありましょう。今日はぼくは1匹のアマゴを掛けただけだったが、心の中は満足感で満ち溢れ、すがすがしい気持でいっぱいだった。 (平成15年3月) |
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