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南会津伊南村釣り旅1
独身貴族の釣り師
「40センチの釣り行こうよ」
岡嶋さんからお誘いの電話があった。
当然40センチ級のイワナやヤマメを釣りに行こうというとは分かっていたけれど、冗談で「鯉釣りはやらないよ」と切り返した。
「今度の金曜日の夜に出発するから。また電話する。」よほど急いでいたのか、これだけ言って電話を切ってしまった。岡嶋さんにしてはアッサリとした電話だった。
渓流釣り倶楽部 渓道楽の会発足当時から在籍している古株だが、仕事の関係上、会員達となかなか休みが合わず、一人で釣行することが多い。私も岡嶋さんとはシーズン中3回同行できれば良いほうで、それだけに電話だけのやりとりが多くなってしまい、会えない分電話が長くなってしまう。
勘違いしないでほしいのは、彼は男で私も男だ。「会えない分電話が長くなってしまう」のは、釣り談義に華が咲くからで、他意はない。
以前、私が勤めていた会社の上司で、今はお互い違う仕事に従事しているが、こうして今日までお付き合いさせて頂いている事にとても感謝している。
50歳は過ぎたと思うが、まだまだ現役の独身貴族。釣りの他にテニスやゴルフもやるスーパーおじさんなのだ。
仕事がとりもつ縁というのは、男女・年齢問わず、いいものだ。我々社会人は1日の3分の1を会社で過ごしている。楽しい出来事や辛い出来事、社内にはたくさんの出来事がある。そんな苦楽を共にしてきた仲間だから、お互いを思いやれる。だから仕事以外では屈託なく付き合えるしバカもやれる。それは孝井さん然り、岡嶋さん然り。
こんなにスバラシイ釣り仲間ができて私は幸せだ。


捕らぬ狸の皮算用
あの時確か「また電話する」と言って電話が切れたはずだけれど、自分の記憶が不安になってきた。今日出発の日のはずなのに、電話がこない。
「中止になったのかなぁ」「来週なのかなぁ」「行き先も聞いてないしなぁ」などと不安をが尽きない。
ゴウを煮やした私は岡嶋さんに電話をしてみた。
「ごめんごめん、これから電話しようと思ったんだよ」などと、チョウシのいい答えが返ってくる。
「えっ、言ってなかったっけ?福島の伊南川だよ。民宿一泊とったから。何時に家に来れる?」おいおい、そこまで決まってるなら早く電話くださいよ。
まったく、チョウシのよさは孝井さんといっしょだ。


夜、待ち合わせ時刻に岡嶋邸に到着。岡嶋さんの愛車(四駆)に乗り換えて福島県に向けて出発した。
東北道はガラガラ。至極順調だ。途中「眠い」と言い出した岡嶋さんと佐野SA.で運転を交代した。
西那須野・塩原IC.で高速を降り、国道400号を塩原温泉郷方面へ向かう。塩原温泉郷を過ぎ、国道121号を北上。道が解らないので、岡嶋さんを叩き起こす。
田島町内で国道289号を左折。会津鉄道陸橋下をくぐり、南郷村へ。更に国道401号を左折。すぐに伊南村に入る。右手に伊南川が流れているようだが、暗くてよく見えない。
「伊南川って言ったらあれでしょ、大物で有名な」
「そうだよ。アベレージ30だよ。2匹釣ったら1匹あげるから」
「いらないよ、オレも釣るから」
車内は、捕らぬ狸の皮算用で華が咲く。
橋の名前は忘れてしまったが、大和橋のひとつ手前の橋を渡り、橋のたもとで仮眠をとる。
時計はAM2:00を回ろうとしていた。
星が瞬く夜空の下、思いはもう30センチオーバーだ。


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