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遥かなる天の川に想いを馳せて1
渓流釣り師よ、無理は禁物
「今度の週末にどこか行こうよ。」
「いいねぇ、丁度七夕にもぶつかるし、知らない山の渓谷にでもシケ込んで、天の川を見上げながら一杯やりますか。」
世話役の孝井さんからお誘いを頂いた。
「山形県に行こうと思う」と言って電話を切った孝井さんだが、釣り場は彼に任せておけば間違いない。
サクラマスの遡上で知られる最上川、最上川へ注ぐ数え切れない支流群、山岳渓流で知られる八久和川が注ぐ赤川水系の支流群、いずれも良型の渓流魚が期待できる。
月山や朝日連峰の山麓から流れるこれらの良渓を探るもよし、近くの古い出湯に浸かり、釣りの疲れを癒し、地酒で一献傾けるもよし。
渓流釣りは山旅湯旅。知らない山の渓流を探って、ひなびた山の湯に浸かる。悪くないな。
渓流釣り師あこがれの旅、そしてロマンの旅だ。


金曜日の夜、私は車で孝井さん宅を訪れた。挨拶もそこそこに、孝井さんの車に乗り換え、山形県を目指す。
釣り場は、置賜(おきたま)白川。
山形県内に白川という川は数多くある。
有名なものの一つは、最上白川。本流は、秋田県境にある神室山系を源に小国川へ注ぐ、一大渓流だ。近くには赤倉温泉、瀬見温泉といった古い出湯がある。いずれの温泉宿にも、投宿したことがあり、この辺は私の思い出の渓だ。
もう一つ有名な白川は、福島県境の飯豊山系を源とする置賜白川。こちらは、私は未知の川だ。孝井さんは去年の11月に家族サービスと称し、あまり気乗りしない奥方様を連れてドライブのついでに、渓流を下見しておいたそうで、今年6月に試釣して良い結果を収めているということだ。
車内で孝井さんが試釣に行ったときのことを話してくれた。
雪代が入っていて、対岸に渡れなかったこと。25センチ級のイワナを数匹釣ったこと。かなり大型のイワナを取り逃がしたこと。などなど。
そして、こんな怖い話もしてくれた。
去年の雪山登山で行方不明になった仲間を探しに来た登山家達に出会った。雪が解けたので、埋まっているに違いない仲間が見つかると思って来たらしい……。
やめてくれ!そんな怖い話は。釣りをしていて得体の知れないものを踏んでしまったら、それこそシャレにならん。
雪山に限らず、山には危険がたくさんある。渓流釣りも例外ではない。何しろ自然が相手なのだから、予測のつかない現象に遭遇することが多々ある。自分の経験、力量、知識、装備、それらを十分考慮して無理・無茶は禁物だ。
私も10数年渓流釣りをやってきたが、「ヒヤリ」「ドキッ」とした経験がいくらでもある。後で考えてみたら、「あそこで足を滑らせていたら一貫の終わりだった」という場所も何度も通過している。
「無理は禁物」という気持ちはある。しかし「あの向こうで渓魚が待っている」と思うと、「少しくらいの無理は……」という気持ちになってしまう。「考え改めねばいかん」
場所が場所だけに万が一の時に発見されにくいし、何より、残された家族の事を考えるべきだと思う。
ウーム、なかなか考えさせられちゃったな。


高速道路のサービスエリアで給油して、仮眠をとった。特に急ぐ旅ではないし「ゆっくり行こうよ」ということになった。


ハミキン
夜が明け、山の稜線がくっきり現れたころ、我々は高速道路を下りた。一路飯豊山を目指す。
我々の車の前には、スキー板を天井に乗せた四輪駆動車が1台、その前に40フィートのコンテナを乗せた大型車が一台。このコンテナ車がやけにノロイ。登坂が続く道だから仕方がないのかもしれないが、それにしてもノロすぎる。
スキー板を乗せた四輪駆動車は、耐え切れず追い越して行った。「カーブの多い山道で無茶な運転をするなぁ」「夏スキーだから太陽が出たら雪が解けちゃうから必死なんだよ」などと冗談を言いながら、四輪駆動車を見送った。
暫くコンテナ車の後ろを走っていたら、コンテナ車がハザードランプを点滅させて左に寄りながら減速した。後ろで走っている我々に気付き、「お先にどうぞ」という合図をおくってくれたと思い、コンテナ車を追い越した。
「あっ」慌ててブレーキを踏んだ。前方に転倒した車と、交通整理のお巡りさんが、対向車を先に行かせようと、こちらに「止まれ」の合図をおくって、立っていたのだ。
車を運転する方ならわかると思うが、大型車は車高が高く、大型車の後ろを走っていると、前方で何が起きているのか、わかりにくい。それを知っているコンテナ車の運転手は、危険を知らせるためにハザードランプを点滅させ、後続の運転手にも前方が見えるように左に寄ったのだ。
さすが、プロのドライバーだと関心した。と同時に、それを読み取れなかった私の未熟さを反省した。
お巡りさんが我々の車にツカツカと寄って来て、「ここはハミキンだよ」と言った。
ハミキン……?妙なことを連想させる言葉だ。私と孝井さんは顔を見合わせ、ハミ出ているはずのない自分のモノを確かめて、お巡りさんを見返した。
お巡りさんは、我々の行動が可笑しかったらしく、「ほら、この黄色い線、ハミ出し禁止でしょうが」と笑いながら言った。
なるほど、「ハミ出し禁止」略して「ハミ禁」か。
キップは切られなかったが、「すみません」と一言いって通してもらった。
お巡りさんは、バカな連中だと思ったに違いない。
とんだ赤っ恥をかいた。


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